逆ガミースマイルとは?その特徴や原因、治療法を解説
序文
笑った時に上の歯茎が目立つ症状を「ガミースマイル」といいますが、その反対のケースを「逆ガミースマイル」と呼ぶことがあります。逆ガミースマイルという名前を始めて耳にする人もいるかもしれません。しかし当クリニックには、昔からその症状に悩まされている患者様も大勢来院しています。そこで今回は逆ガミースマイルの特徴や原因、治療する方法について詳しく解説します。
逆ガミースマイルとは
ガム(gum)は、歯茎を意味する英語です。つまり、ガミースマイルというのは、歯茎が目立つ笑顔を意味する言葉となります。具体的には笑った時に上の歯茎が3mm以上、見える場合が該当します。そして、その反対のケースを逆ガミースマイルと呼ぶのですが、具体的な症状に関しては少し注意しなければなりません。
つまり、逆ガミースマイルは、笑った時に下の歯茎が見える状況だけを指す言葉ではないということです。実際は、笑った時に上の歯がほとんど見えなかったり、下の歯の方が目立ってしまったりする症状を逆ガミースマイルと呼んでいます。
逆ガミースマイルの原因とは
逆ガミースマイルになる原因としては、次の4つが挙げられます。
原因1:加齢による筋肉の衰え
中高年になってから逆ガミースマイルの症状が見られるようになった場合は、加齢による筋肉の衰えが原因として考えられます。口腔周囲の筋肉が衰えると、口元が弛んで口角が下がってきます。その結果、上唇も上がらなくなり、下の歯ばかり目立つようになるのです。
原因2:歯ぎしりによる歯の摩耗
歯をギリギリと擦り合わせる「歯ぎしり」の習慣が長く続くと、歯が摩耗してかみ合わせが深くなります。そうすると症例によっては笑った時に下の歯が目立つようになるのです。
原因3:遺伝による影響
歯の大きさの異常や骨格的なアンバランスによって逆ガミースマイルになっている場合は、遺伝的な要因が強いと考えられます。とくに小さい頃から逆ガミースマイルの症状が認められるケースでは、親から受け継いだ遺伝的な特徴によって、下の歯が目立ちやすい傾向にあります。
原因4:歯並び・噛み合わせの異常
歯並びや噛み合わせの異常が逆ガミースマイルの原因になっている場合もあります。例えば、下顎前突や反対咬合(はんたいこうごう)などは、必然的に下の前歯が目立つようになります。いわゆる“顎がしゃくれている”症状です。
逆ガミースマイルの治療法は?
逆ガミースマイルは、いくつかの方法で改善することが可能です。以下に挙げるのはそのうちの一部とお考えください。
治療法1:セットバック法
セットバック法とは、逆ガミースマイルの原因となっている下顎の位置を後方に下げる方法です。一般的には上下左右の第一小臼歯(前から4番目の歯)を抜いて骨を削り、骨を下げます。通常の歯列矯正とは根本的に異なる治療法ですので、その点はご注意ください。
治療法2:人中短縮(じんちゅうたんしゅく)
人中とは、鼻と上唇の間の部分を指す言葉です。この部分が長いと上の歯が隠れやすくなり、逆ガミースマイルの症状が現れます。外科手術によって人中を短くすれば、上下の歯の露出のバランスが良くなります。
治療法3:ワイヤー矯正
1歯1歯にブラケットを接着して、歯列全体に矯正用ワイヤーを通す方法で、ほとんどの歯並びに適応できます。ただ装置が目立ちやすい、歯の移動に伴う痛みが強い、食事と歯磨きがしにくいといった欠点があります。
治療法4:マウスピース矯正
透明なマウスピースを使った方法です。装置が目立ちにくい、食事や歯磨きを普段通りに行える、歯の移動に伴う痛みが比較的弱いなどのメリットがあります。逆ガミースマイルの症状によっては適応外となる場合もあります。
治療法5:ラミネートベニア
セラミック製のシェル(つけ爪のようなチップ)を歯の表面に貼り付ける方法です。短期間かつ簡便に逆ガミースマイルの症状を改善できる場合があります。ただ歯並びを根本的に矯正するわけではないので、治療によって得られる効果には限界があります。
治療法6:セラミック矯正
セラミックの被せ物を装着することで、歯並びを良くする方法です。ラミネートベニアよりは歯を削る量が多くなりますが、その分、適応範囲も広がります。
まとめ
今回は、逆ガミースマイルという特殊な症状の原因や治療法について解説しました。笑った時に下の前歯が目立つ逆ガミースマイルは、口元の審美性を低下させることから、治療による改善を希望される方が多い傾向にあります。逆ガミースマイルの治療法は多岐に渡ることから、当クリニックでは、それぞれのメリット・デメリットをしっかりお伝えしたうえで、一人ひとりに適した治療プランを作成します。
執筆者情報
院長/歯科医師
中澤 玲 Rei Nakazawa
岩手医科大学歯学部を卒業した後、すぐに顎関節治療の勉強に没頭し、 多面的な目線で顎関節の治療を行う。 その後、アメリカ・ボストン大学に留学し、世界で注目される治療や歯科材料に目を向け研鑽し、審美治療やインプラント治療においては、ドイツ大手のインプラント会社のインターナショナルインプラントインストラクターに任命され、活躍している。
日本インプラント学会、ブラジル審美治療学会論文投稿や歯科雑誌への執筆、2013、2014年とブラジル審美治療Marcelo Daltro先生を個人的に日本に招聘し共同で講演活動を行う。インプラントの本場ドイツでもFrank Zastrow先生と講演活動を行っている。 2014年はドイツのインプラント専門医達の間では解消されていない問題である『顎関節症とインプラント治療』についての講演を行った。
世界でも著名な審美治療医師の一人、Dr.Iñaki Gamborenaと共同講演を日本GC社で開催。高水準のディスカッションにより多数の賞賛を得た。自身でも若手歯科医師向け年間コースを2014年に開設し、日本国内でも各地で講演中。